とある弁護士の読書ブログ

マイペースに書籍の紹介、感想などなどを綴っていきます

弁護士の日常について~民事訴訟~

 さて,本日は,書評をお休みして弁護士の日常についてツラツラと書いてみたいと思います。


 弁護士というと,やはり裁判所に行って,弁論を繰り広げているイメージがそこそこあるのではないかと思います。
 もちろんそういった面もありますが,意外とやっていることは地味です(笑)


 まず,仕事の比率ですが,基本的に訴訟の仕事は圧倒的に民事事件が多いです。
 そして,民事事件においては何をやっているかというと,主張書面(法曹界では,これを『準備書面』と言ったりします。)を起案し,裁判期日当日は,「陳述します」というと,主張書面に書いた内容が法廷等で述べられたことになるのです。


 そのため,裁判傍聴に行かれたとしても,やり取りとしては下記の通りになります。例は第一回弁論期日とします。


裁判官「原告,訴状を陳述ということでよろしいですね。」
原 告「はい。陳述します。」
裁判官「次に,被告,答弁書を陳述ということでよろしいですね。」
被 告「はい。陳述します。」
裁判官「では次回期日は…」
 という感じで終わります(笑)細部は端折りましたが,大体こんな感じです。
 そのため,1回の期日が1分とかで終わるなんてこともザラにあります。
 また,同一の時間に5個くらい期日が入っていることもザラにあります。
 なので,傍聴席は,陳述にやってきた弁護士等の代理人でいっぱいになっているのです(笑)
 はたから見れば,なかなかシュールな光景ではないかと思いますね。



 さて,肝心の書面ですが,これは割と書く(弁護士は書面を書くことを「起案する」という言い方をしますので,以後,「起案」という言葉を使います。)のに時間が掛かります。


 大まかに訴訟で問題になる論点は,①法律解釈の問題,②事実認定の問題,③事実に対する評価の問題の3つに分かれます。
 そのため,やるべきこととしては,①との関係では,法律に関するリサーチ(司法試験で使うような教科書的なものからスタートして,判例のピックアップ・読み込み,場合によっては研究者の先生が書かれた論文を読むこともあります)をします。
 次に,②については,依頼者から頂戴している資料を整理して,時系列表などを作って事実関係を精査します。また,場合によっては依頼者のみならず関係者からも話を聞くなどします。
 最後に③は,その事実特有の知見(高度な科学的な知見が必要になることもあります)についてのリサーチ及び依頼者からご教示いただくといったことをします。


 これが前さばきの段階です。


 適用される法律関係や事実関係及び特有の知見を頭に入れたら,次にやることは実際にこれらを前提にどのような主張・反論ができるかを検討します。
 その際には,相手方の反論や,裁判所がどのような判決をするかについてまで予想します(これは事件が進むごとに適宜修正していきますが)。


 そして,最後に仕上げとして,起案をしていくのです。


 こういった流れを経て作成された書面ですが,これで完成ではありません。


 この書面を(共同で事件にあたっている場合には)他の弁護士にも見てもらい,場合によっては修正をしてもらったり,議論したりして,何度か修正案を作成します。


 そして,弁護士間協議を経てから,依頼者に最終確認に回します。
 依頼者からのゴーサインがいただけた場合に,初めて裁判所に提出するという運びになるわけです。
 訴訟事件においては,この主張書面を何度も提出しあうことになります(訴状→答弁書→原告第一準備書面→被告第一準備書面→原告第二準備書面→被告第二準備書面…)。


 凄い大雑把なことを言うと,オーダーメイドの服屋さんみたいにモノづくりのイメージに個人的には近いのではないかと思います。

 
 時間に制約があり,常に納期との関係でビクビクはしていますが,上記のプロセスを経て,提出した書面の主張を,裁判官から「そのとおりですね」等と言われた日には,ウキウキで事務所に帰ることになります(笑)そして意気揚々と依頼者に報告するわけですが(笑)


 とまあ,弁護士は基本的にこういった書面を起案することに日常から追われているのではないかと思います。


 ではまた。